43.ロシア大統領選挙で、日米のメディアがウラジーミル・プーチンに対して、どちらかと言えば、否定的な報道をしたのはなぜか?

(1)お礼
123様、昨夜から日付が替わって本日に至る迄、ボリュームのある貴重なコメントを立て続けに3つも投稿して下さりありがとうございました。
福知山線脱線事故の話題を読んでいると、2011年1月29日(土)に、123様と福知山線脱線事故の事故現場に行ったことがつい昨日のことのように思い起こされ、懐かしくなりました。
福知山線脱線事故の話題は、いずれ拙ブログでも取り上げようと思っていました。
日航ジャンボ123便についても、いずれ拙ブログでも取り上げようと思っています。
もちろん、私ごときが書いても、123様の足下にも及ばないと言いますか、所詮、123様の命がけの調査結果をただ拡散するだけですが。
ブログ「(新)日本の黒い霧」で、この話題が余り出なくなった中、2011年12月22日に、群馬県多野郡上野村村長を10期連続で務めた黒沢丈夫が逝去された。
その直後あたりから、123様は、精力的に「(新)日本の黒い霧」で取り上げていない新たな視点を中心に、ウェブ上の各方面で執筆されている。
123様が管理してらっしゃると思われるiZaのブログも3年3ヶ月ぶりに、2011年12月に記述が復活しましたね。
「日航ジャンボ123便はソ連の日本侵攻及び自衛隊公安の暗躍だっ」と、タイトルもリニューアルし。
それにしても、黒沢丈夫は123便を象徴するかのように、1913年12月23日に生まれているんですね。いやー、驚きました。
(2)ロシア大統領選挙の前も後も、日米のメディアは、ウラジーミル・プーチンに対して、どちらかと言えば、否定的な報道を続けている。
ロシアで5日、前日に投票され、プーチン首相が当選を決めた大統領選の結果に抗議する野党勢力などが主催する集会が各地で開かれた。インタファクス通信によると、抗議集会は少なくとも国内10都市で開かれ、警察が全国で少なくとも600人以上を拘束した。
治安当局は昨年12月に抗議運動が広がって以来、国民の反発を招くような「力の行使」を避けてきた。しかしプーチン首相の大統領復帰が決まったことで強硬姿勢に転じた可能性がある。
モスクワの集会はクレムリンから約1キロのプーシキン広場で開かれ、主催者発表で3万~4万人(警察発表で約1万4000人)が参加。主催者は政権が大規模な選挙違反を犯したと主張し、やり直し選挙とプーチン氏の退陣を要求した。
集会に参加した雑誌記者のイワンさん(50歳)は、4日の投票日に近隣のモスクワ州で投票所の監視員を務め、「選挙違反と思われる行為を何度も目撃した」と語った。一度は違反行為の疑いがある男を取り押さえたが、駆けつけた警官がしばらくして男を釈放してしまったといい、「政権と警察が共謀していたと思う」と話した。
また観光業のマリーナさん(52歳)は、野党側の今後の戦略として「抗議集会を繰り返すことで、より多くの国民の理解を得て、将来の変化をもたらすしかない」と語った。
集会で衝突などはなかったが、警察は集会終了後も会場に残っていた、政権批判で知られる著名ブロガーのナバリヌイ氏らが「秩序違反」を犯したとして、取り押さえた。警察は約250人を拘束したと説明しているが、野党側は拘束者は500~1000人に上ると主張している。
このほか市内で開かれた別の無許可集会で約50人、第2の都市サンクトペテルブルクの集会で少なくとも300人が拘束された。
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こうしたニュースに接し続けた日米の多くの人々は、プーチンに対して悪いイメージを抱くだろう。多くの日本の人々が、日本のマスコミのイメージ操作によって、小沢一郎に悪いイメージを抱いているのと同様に。
「richardkoshimizu's blog」を見ている人は、違うイメージを抱くだろう。
(3)これからのロシア プ-チンの本音
転載開始
●これまでのロシア外交
ロシア政治経済ジャーナル No.810 2012/3/5発行者 北野 幸伯

↑4日、モスクワの投票所で、報道陣の質問に答えるロシアのプーチン首相(ロイター)
次に外交を考えてみます。
ソ連ゴルバチョフの時代は、「親欧米外交」でした。それで、ソ連は勢力圏にあった「東欧」を失った。さらに、ソ連15共和国も失った。(独立されてしまった)
新生ロシア初代大統領エリツィンの時代も、「親欧米外交」でした。
理由は、新生ロシア経済がボロボロで、日欧米、国際金融機関からの借金に頼りきりだったから。
「金を借りる人は、金を貸す人の言うことを聞け!」がこの世の常識です。
2代目大統領プーチンの時代は、「反欧米」の時代でした。
・イラク戦争
・ユコス問題
・グルジア・バラ革命
・ウクライナ・オレンジ革命
・キルギス・チューリップ革命
などで、ことごとくロシアと欧米は対立。そして、「米ロ新冷戦」なる言葉も生まれた。
米ロの対立はどんどんヒートアップし、結局08年8月8日の「ロシア-グルジア戦争」に発展していきます。(この時、大統領はすでにメドベージェフだったが・・・)
ロシア3代目大統領メドベージェフの時代は、概して「親欧米」でした。グルジア戦争の翌月、リーマンショックが起こった。
それで、アメリカもロシアも冷戦を継続できなくなったのです。両国は和解することを決め、「米ロ関係『再起動』」なる言葉も生まれました。そして、実際グルジア戦争以降、米ロ関係は改善されていたのです。
●「米ロ再起動」の終わり
ところが、ロシアは現在、親欧米のメドベージェフ外交を捨てさり、再び反欧米のプーチン外交にシフトしています。
なぜ?
きっかけは、去年のリビア戦争でした。
国連安保理で3月17日、リビアへの武力行使を容認する決議案が採択された。
メドベージェフのロシアはこの時、拒否権を使わず、「棄権」しました。それで、欧米は国連安保理のお墨付きを得て、リビア戦争を開始できた。
メドベージェフはこの時、どうもプーチンに相談せず、自分で勝手に決めたようなのです。それで、プーチンとメドベージェフの対立が表面化してきました。
****露の大統領×首相…リビアめぐり真っ向対立*****
リビアに対する英米仏など多国籍軍による空爆の根拠となった国連安保理決議を巡って、ロシアのメドベージェフ大統領とプーチン首相の見解が対立し、「二頭体制」が発足した2008年以来、「最も激しいやりとり」と注目を集めている。
(読売新聞11年 3月23日(水)9時44分配信)
一体、二人の意見はどう異なるのでしょうか?
<首相は21日、安保理決議を「不完全で欠点がある」「(決議は)中世の十字軍を想起させる」と批判した。
一方、大統領は同日、「決議はリビア情勢を反映しており間違いとは思わない」と述べ、「十字軍」との表現についても「文明の衝突につながる表現は容認できない」と批判した。重要な外交政策を巡り2人が公然と争うのは異例。地元メディアでは来年の大統領選をにらんだ動きなのか、単なる見解の相違なのか臆測が飛び交っている。〉(同上)
要するに欧米の支配者層に取り込まれたメドベージェフが、プーチンを無視して単独行動に出たわけですね。
で、結果はどうだったか?
この戦争を主導した、フランス、イギリスは、リビアの石油利権をきっちりゲットしました。
アメリカは、例のごとく「戦争=公共事業」で経済を安定させた。で、ロシアは?
これは、な~~~~にも得るものがなかったのです。
ロシアは、ここ数年「米ロ再起動」をめざしてきた。しかし、アメリカは自己の利益追求に貪欲ですから、ロシアは「再起動で全然得しなかった」という思いがある。
一例をあげれば、アメリカはロシアがもっとも嫌がる「東欧MD計画」をすすめています。(オバマは「計画を見直す」といったにもかかわらず。)
さらに、プーチンは、「アメリカはロシアの下院選挙、大統領選挙に干渉し、俺(プーチン)の復活を阻止しようとした!」と怒っている。
そう、メドベージェフの「米ロ再起動」時代は、プーチン復活で過ぎ去ります。
これから、「米ロ新冷戦第2ラウンド」がはじまるのです。
●プーチンは、実際どう動く
これを読むのは簡単なんです。要するに、プーチンが1期目2期目でやってたことを、またはじめる。
●中ロ同盟の復活
中国とロシア。この二つの大国は、幕末の薩長と同じ。一藩で、幕府(アメリカ)に対抗することはできないのです。
たとえばリビア。中国は、本音ではこの戦争に反対でした。しかし、メドが米ロ関係を重視し、「拒否権」を使わず「棄権」することにした。
もし、中国だけが「拒否権」使ったらどうです?
中国は「悪い独裁者カダフィを擁護する悪の帝国」になってしまったでしょう。(それで、中国も「棄権」した。)
ところが、イラク戦争のときはどうでしょう?
この時は、安保理常任理事国の3国、ロシア、中国、フランスが一貫して戦争に反対した。それで、アメリカは情報戦に勝てませんでした。
独裁国家中国、ロシアより、むしろアメリカが悪の帝国になってしまった。
そう、ロシアのパワーは、中国と一体化してはじめて大きな力をもつ。
それで、プーチンは、メドベージェフ時代に冷めた中国との関係を修復し、「中国・ロシア同盟」を復活させるでしょう。
●上海協力機構の再強化
ロシアと中国は05年以降、上海協力機構(SCO)を「反米のとりで」「多極化推進の要」として育ててきました。
しかし、メドベージェフはプーチンの熱意を共有しておらず、SCOの発展は止まっていた。
プーチンは、再びSCOの強化に乗り出すでしょう。
SCOのメンバーは、中国・ロシアに、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン。オブザーバーが、モンゴル、インド、パキスタン、イラン。さらに、ガス大国トルクメニスタンや、大国トルコなども加盟を検討している。
特に、ブリックス4カ国のうち、中国、ロシア、インドがいるのは大きいですね。
それに、ロシア、カザフ、イラン、トルクメニスタンなどは世界的資源大国です。
プーチンはSCOを再び「多極化推進の中心組織」「反米のとりで」にしていくことでしょう。
●ブリックス諸国との連携強化
メドベージェフは、アメリカを中心とするG8との連携を重視してきました。ちなみにG8は、昔G7と呼ばれていた。なぜG8になったかというと、ロシアが入ったからです。
つまり、ロシアはG8の中で、一番新参者で、一番格下なのです。
一方プーチンは、ブリックス(ブラジル、ロシア、インド、中国)重視です。
ブリックスの中では、中国のパワーが圧倒的。
それでも、お互い「多極化」「アメリカ一極支配打倒」という共通目的でつながっている。
●目的はアメリカのとどめを刺すこと、方法は・・・
ロシア上層部の認識は、「米ロは現在冷戦中」です。
考えてみてください。プーチンは、「アメリカ国務省が、ロシアで革命を起こそうとしている」と思っている。
プーチンの頭の中には、 アメリカ国務省 → ロシア野党 → 大規模デモ
という構図が見えるし、前述のように、そう公言してもいます。
日本だったら、反米首相(例、鳩山さん)は、コロッとやられてしまいます。
しかし、プーチンの場合、「売られたケンカは買ってやるぜ!」となる。
だから、プーチンは、これから上記のように反米勢力を再結集することで、アメリカに対抗していきます。
そして、「とどめを刺す」方法は、「ドル基軸通貨体制」を完全に崩壊させること。
その方法は、「貿易決済からドルを外していく」(=基軸通貨でなくす)こと。
実際、プーチンは、どこかの国の首脳と会うたび、「貿易決済は、ドルを使うのをやめ、自国通貨でやりましょう」と提案しまくっています。
●日ロ関係~領土問題のゆくえ
最後、日ロ関係について。先日プーチンが、「北方領土問題を解決したい」と発言し、期待が高まっています。
プーチン発言の真意を知るために、「領土問題4つの立場」をおさえておきましょう。
まずロシア側。1、北方4島は、ロシア領。返還なんてありえない。これは、メドベージェフの立場。「北方4島はロシアの領土。『返還』?
もとからロシアの領土を、日本に返還するってどういうことですか?」
つまり、「領土問題はそもそも存在しない」という立場。なんでメドは、こうなのでしょうか?
この人は、そもそも日本に全然興味がないのですね。
「ツイッター大好き!」「ブログ大好き!」「アメリカ大好き!」のメドベージェフ。
彼の唯一の願いは、「アメリカから認められること」。
だから、そもそも日本を重視してないし、対日外交もぞんざいになるのです。
●二島返還で終わりにしましょう
プーチンの立場はこれです。その根拠はなんでしょうか?
1956年の「日ソ共同宣言」です。
この宣言の最重要ポイントは、<日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。>
つまり、「平和条約を締結し、2島を返還する」ことで合意したと。
プーチンは、「日本も二島、ロシアも二島。双方妥協して、この問題を終わらせましょう」と主張しているのです。
●二島先行返還論
これは、鈴木宗男さんや佐藤優さんが主張しているものです。
つまり、「日ソ共同宣言に基づき、まず二島返してもらおう」「残り二島については、協議を継続しよう」と。
ここ最重要。プーチンは、「二島返還で終わりにしよう」といっている。
日本の二島返還論者は、「まず二島返してもらい、残りの二島については協議を継続する」(そして、未来の返還をめざす)ということで、ズレがあるのですね。
●四島一括返還論
これは、日本でもっとも一般的なものです。「北方領土は、そもそも日本のものなのだから、4島返してもらうのは当然だ!」
で、プーチンが「北方領土問題を解決したい」というとき、真意は、「二島返還で終わらせたい」ということなのです。
<また、会見では、平和条約締結後に歯舞、色丹両島を日本に引き渡すと定めた1956年の「日ソ共同宣言」にふれ、01年にイルクーツクで森喜朗首相(当時)との首脳会談を行った際、プーチン氏は同宣言の有効性を認めたものの、日本側はさらに「2島ではなく、4島が欲しい」と主張したと指摘。
「これはもう1956年の宣言ではない。すべてが再び出発点に戻った」と述べ、宣言の内容を上回る譲歩には否定的な姿勢を示した。>(同上)
●米中二極世界の中で
1945年~1991年までを「冷戦時代」(=米ソ二極時代)とよびます。
ソ連が崩壊した翌年1992年からリーマンショックが起こった08年までを「アメリカ一極時代」とよびます。
その後世界は、「米中二極時代」に突入しています。
意識するしないにかかわらず、世界の国々は、「米中どっちにつくの?」と決断を迫られることになる。
メドベージェフは、明確に「アメリカにつく」ことを選択していました。
しかし、プーチンは、「ロシア革命を画策するアメリカと組めるか!」ということですから、当然中国につくことになるでしょう。
すると、アメリカは、計画中のシリア戦争、イラン戦争がやりにくくなります。
なぜかというと、国連安保理で中国、ロシアが拒否権を使い、戦争を「非合法化」してしまうから。
まあ、それでもなんやかんや理由を見つけて戦争にもっていくことでしょう。
ルーズベルトの時代から、アメリカは「戦争の口実を見つける」ことには異常な能力を発揮してきました。
さて、日本。プーチンは、柔道、スシが好きな親日政治家。しかし、好き嫌いで行動が制約されることはありません。
日本と接近するのは、当然「ロシアの国益」のため。
じゃあ、ロシアの国益ってなんだ?
たとえば、東シベリア開発。ロシアは、中国にシベリア開発をさせたくないのです。
「のっとられるかもしれない」という恐怖がある。
その点、日本がシベリアをのっとる心配はありません。だから日本にシベリア開発を支援してほしい。
たとえばハイテク。ロシア経済の最重要課題は、「近代化」「多角化」でした。日本はハイテク大国なので、ロシア経済の近代化に協力してほしい。
そして、最重要は、欧米 対 中ロ 覇権争奪戦とのからみ。
現在日本は、当然欧米陣営にいる。
プーチンは、日本を中ロ陣営にひきずりこみたいのです。
それで、ロシアは、反米民主党政権の誕生を心から歓迎したのでした。
こういう意図を知って日本はどう動くの?
これは、日本の政治家次第ということでしょう。
転載終了