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158.内部被曝した女性は奇形児を産む可能性が高いのか?

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↑コスモスと道重さゆみ

(1)「放射能地域の人、結婚しない方がいい」 「日本生態系協会」会長発言が波紋

 「放射能雲の通った地域にいた方々は、極力結婚しない方がいい」。内閣府所管の公益財団法人「日本生態系協会」の池谷奉文会長(70歳)が、こんな発言を講演でしていたことが分かり、物議を醸している。

 発言があったのは、自治体議員ら65人が出席して東京都内で2012年7月9日に行われた日本生態系協会主催の講演の中だった。

(2)「子どもの奇形発生率がドーンと上がる」

 講演名は、「日本をリードする議員のための政策塾」。その録音内容によると、池谷奉文会長は、ロシアのチェルノブイリ原発事故を引き合いに出して、日本でも事故による内部被ばくがもっとも懸念されると強調した。そのうえで、こう述べた。

 「放射能雲が通った、だから福島ばかりじゃございませんで、栃木だとか、埼玉、東京、神奈川あたり、だいたい2、3回通りましたよね、あそこにいた方々はこれから極力、結婚をしない方がいいだろうと。結婚をして子どもを産むとですね、奇形発生率がドーンと上がることになっておりましてですね、たいへんなことになるわけでございまして」

 これに対し、講演に出席した福島市議4人が、議長らとともに、市議会の立場として8月29日に会見し、「不適切な差別発言であり、容認できない」と発言の訂正・撤回を求めた。「福島の人とは結婚しない方がいい」と受け止められたという。地元紙「福島民報」では、科学的な根拠がないといった専門家の意見を紹介し、県民から怒りの声が出ていると報じている。所管の内閣府では、事実関係を調べているとしている。

 ただ、ネット上では、池谷会長の発言に対し、賛否が分かれているようだ。

 「これは酷い」「もはや、立派な差別発言」との疑問は多いが、一方で、「同じような思いの人は多い」「差別でなく警告だと思います」と一定の理解を示す声も相次いでいる。

日本生態系協会によると、30日夕までに電話などで来た4、50件の意見のほとんどが「とんでもない」「謝罪しろ」と批判的なものだった。

(3)「差別発言ではまったくありません」

 一方で、「よく言った」とする声も1、2件来ていたとした。

 発言について、日本生態系協会の総務担当者は、協会が反原発の立場であるわけではなく、池谷奉文会長の私見を述べたものだと説明した。放射線の知識がある獣医として、池谷会長がチェルノブイリ事故の報告書などを調べる中で出てきた考え方だという。

池谷会長は、取材に対し、自らが反原発の立場であることを明確にしたうえで、発言についてこう説明する。

 「議員の方から文書で指摘を受けましたが、差別発言ではまったくありません。もっと大きな問題を言っており、事故の重大性をきちっと認識する必要があるということです。26年前のチェルノブイリでは、奇形児が生まれたり、発がん率が上がったりしたことが現実にありました。日本の場合も、原発事故の後では環境が違っており、安易な考えで結婚することは危ないと言いたかったわけです。結婚するときは、十分に注意して下さいということですよ」

そして、「言ったことは間違っていない」とし、議員からの訂正・撤回要求については、「それに応じるというよりは、発言を真摯に受け止めてほしいということです」と言っている。

(4)結婚への支障は見方が分かれる

 ネット上では、福島県出身のため結婚に支障が出たとの報告も見られるが、実際のところ事故の影響は出ているのだろうか。

 福島県内のある結婚相談所では、「福島の女性が県外の男性と結婚しようとしたところ、男性の父親にダメだと言われたという話は聞いたことがあります。福島の男性は特に、昨年あたりからお見合いが難しくなっているようです」と話す。池谷会長の発言については、「信憑性が低いのに、風評被害があったら困りますね」と漏らした。

 別の相談所では、「県内のカップルは、考え方を共有しているので結婚に支障はないですね。県外の方とのケースについては、支障などは特に聞いていません」と言う。発言に対しては、「遺伝子の異常など分からないことを考えても仕方がないので、なるべく考えないようにしている人が多いようです。結婚のことが出ても、『またか』みたいな感じだと思います」と答えていた。

↑㊤公益財団法人「日本生態系協会」の池谷奉文会長
↑公益財団法人「日本生態系協会」の池谷奉文会長

(5)~(8)は、原発リテラシーとっとり 福島の子どもたち対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」ー細野環境相と福島県立医大の懇談 ー [2012年08月31日(Fri)]から転載

(5)「日本生態系協会」会長、池谷奉文氏の発言について。
 
 池谷奉文氏の発言は、政治的偏向しない研究者としての発言であり、それを「差別発言」にすり替える福島の議員達の、福島県民に益するところのない、国策に対する政治的迎合姿勢こそ犯罪的である。

 この議員の中に一人でも、内部被ばくの過小評価のデマ広報に加担しない者はいるのだろうか?福島県人の自主移住の補償、推進、福島の子ども達の集団疎開の権利を担保する財源確保に動いた者はいるのだろうか?
 
 科学的知見に基づく一研究者の発言を、自分たちの主張と異なるという理由だけで、差別発言と決めつけ封殺にかかる行為こそ「差別」ではないか。

 私たち、市民は本当のことが知りたい。「安全安心神話」は3・11と共に崩壊した。3・11以前に引き戻そうとしても、引き返す人はいない。福島で今現在、起きていることが、私たちにもう「嘘」は信じられないと思わせるのだ。

 チェルノブイリの臨床医学的データーがあるから、山下氏率いる福島県立医大は、福島の子ども達を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」をやりたがっているのだ。健康被害があるから、学術調査をやりたがっている。調査はしないより、したほうがいい。
 
<追記 2012/9/1> すでに福島第一原発事故による健康被害は出ている。チェルノブイリの医学的データーと重なる調査結果が出ている。その結果に対する「内閣府原子力被災者生活支援チーム医療班」のコメントは信用できない。 

(6)福島県内の子供36%にしこり 福島以外でも甲状腺検査へ

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120827/trd12082711260006-n1.htm 2012.8.27 産経

 政府は27日までに、福島県以外の全国3カ所で、18歳以下の4500人を対象に甲状腺超音波検査の実施を決めた。東京電力福島第1原発事故を受け、福島県内の18歳以下の子供を対象に行っている検査では約36%の子供の甲状腺にしこりなどが見つかり、これらが事故による影響かどうかを見極めるためデータを集める。

 内閣府原子力被災者生活支援チーム医療班は「良性のしこりは健康な人にもよく見られるものだが、疫学的な調査がこれまでにない。福島県からできるだけ遠く、放射線の影響がない場所で調べる」と話している。

 同チームによると、福島県内で行っている検査と同様の方法で、来年3月まで実施。日本甲状腺学会などの専門医が担当し、疫学の専門家も加えて結果を検討する。

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 国策にぴったりと寄り添う山下グループだけに、調査やデーターを独占させてはならない。彼等は研究者としての功名心のためにデーターを使っても、調査対象者のためにデーターを活用するとは思えない。データーは隠ぺいされる危険性もある。

 また、調査が被ばく者たちを被ばく地に置いたまま、「将来への予防」目的で実施されるなら、人体実験の謗りを免れないだろう。

 「将来への予防」なら、私たちはすでに完璧な回答をもっている。脱原発が最良の予防だと知っている。
 
(7)福島で「ゲノム解析」 被ばく調査で環境相表明

http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012083001002185.html 共同通信 2012/08/30 23:12

 細野豪志環境相は30日、東京電力福島第1原発事故の被ばくによる遺伝子への影響を調べるため、来年度から福島県民を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」に着手する考えを明らかにした。

 福島県立医大(福島市)で開いた私的懇談会の終了後、記者団に述べた。

 細野環境相は「政府としてしっかりと(福島に)向き合っていく。遺伝子の調査はすぐに不安の解消にはつながらないかもしれないが、人間の根源的な遺伝子を調べることで将来への予防になる」と語った。環境省は子どもを中心に調べる方針。

(8)2009年08月の共同ニュース

 長崎原爆で死亡した被爆者の解剖標本は、被爆から60年以上経っても放射線を放出

長崎原爆で死亡した被爆者の解剖標本は、被爆から60年以上経っても放射線を放出

 長崎原爆で死亡した被爆者の体内に取り込まれた放射性降下物が、被爆から60年以上たっても放射線を放出している様子を、長崎大の七条和子助教らの研究グループが初めて撮影した。放射線を体の外側に浴びる外部被ばくと別に、粉じんなど「死の灰」による内部被爆を裏付ける“証拠”という

 内部被爆の実態は研究が進んでおらず、七条助教は「病理学の見地から内部被ばくの事実を証明することができた。今後、健康への影響を解明するきっかけになるかもしれない」と話している。

 七条助教らは、爆心地から0.5~1キロの距離で被爆、急性症状で1945年末までに亡くなった20代~70代の被爆者7人の解剖標本を約3年間にわたり研究。

 放射性物質が分解されるときに出るアルファ線が、被爆者の肺や腎臓、骨などの細胞核付近から放出され、黒い線を描いている様子の撮影に成功した。アルファ線の跡の長さなどから、長崎原爆に使われたプルトニウム特有のアルファ線とほぼ確認された。

 鎌田七男広島大名誉教授(放射線生物学)は「外部被ばくであればプルトニウムは人体を通り抜けるので、細胞の中に取り込んでいることが内部被ばくの何よりの証拠だ。広島、長崎で軽んじられてきた内部被ばくの影響を目に見える形でとらえた意味のある研究だ」としている。

(9)~ (15) は、一輪の花<東京新聞 2012年1月24日 米ビキニ環礁核実験 汚染と被害 50年以上 マーシャル諸島 元議員 アバッカさんに聞く >からの転載

東京新聞 2012年1月24日付け

(9)米ビキニ環礁核実験 奇形児の出産相次ぐ(このタイトルは私がつけました)

 1946~58年、米国が67回の核実験を繰り返した中部太平洋のマーシャル諸島共和国。

 半世紀以上たっても消えない放射能で、環境は破壊され、健康被害が続く。米政府は、一部の土地を除染して住民に帰島を求めているが、安全性に不安を抱く人は多い。「私たちと、福島には共通点がある」。こう話す同国の元上院銀アバッカ・アンジャインさんに話を聞いた。

(10)解決の糸口求めて来日

 「なぜ汚染された島に帰らなければいけないのか、私たちは怒っている。どうすればいのかわからない。解決の糸口を見つけたくて来日しました。1月14日、横浜で開かれた脱原発世界会議。ゲストに招かれたアバッカさんが、こう壇上から参加者に話しかけた。

 マーシャル諸島共和国は人口約6万1000人。「真珠の首飾り」と呼ばれる29の環礁と五つの島が海洋に広がる。米国は、ビキニ、エニウェトクの両環礁で、核実験を実施。アバッカさんの出身地ロンゲラップを含む四つの環礁に汚染を広げた。

 ロンゲラップ環礁では1954年3月、日本の漁船・第五福竜丸も被害を受けた水爆「ブラボー」実験で、妊婦や子どもを含む住民86人が死の灰を浴びた。

 米国は住民に実験を予告せず、3日後になって別の米軍基地へ連れ出した。さらに3年後の57年。米国は『安全宣言』を出し、住民を帰島させた。

 しかし、「甲状腺障害やがんなど、様々な病気、流産や奇形児の出産が相次いだ。住民は放射能のことなど知らなかったが『何かがおかしい』と気づいた」とアバッカさん。

 1985年、住民全員の意思で、再び島外へ避難した。米国からは一切の援助はなく、国際環境団体グリンピースが脱出し金や船を用意した。

 米国は1986年になってようやく「四つの環礁の住民に補償する」と、間接的に汚染を認めた。90年代からはロンゲラップ環礁の本島でインフラ整備や除染などの「再居住事業」を開始。住民に無理強いする形で「事業完了後、住民は2012年に帰島する」との合意を成立させたという。

 アバッカさんは、「除染は不十分で、安全ではないのに、今から半年以内に島へ帰れという。住民は分断され、混乱している。中心部だけ除染して、住むか同課の判断を住民に押しつける。悲鳴をあげて、壁に頭をぶつけたいような気持ちだ。福島の人も同じ状況ではないか」と話す。

(11)前の生活取り戻せぬ

 米国が除染したのは、約60の島からなる環礁で、本当ひとつだけ。しかも、約222ヘクタールのうち約80ヘクタールの住宅地に限定された。被ばく前の住民は、カヌーで海に漕ぎ出し、環礁の島々で食料を採集する自給自足の生活を送っていた。ココヤシ、パンの木の実、ヤシガニ・・・。環礁御ぜんたいが生活の場だった」。

 「今戻るというのは、本島にある狭い住宅地から一切外に出るなということ。これでは以前の暮らしは取り戻せない。除染されていない場所に立ち入った場合には、健康被害の補償もない。食べ物による内部被曝の危険は、将来も続く」

 58年前の実験当日、住民は空から降ってくる白い雪のようなものを「石鹸と間違えて」顔に塗ったり、口に入れたりした。それは危険な放射性物質だった。

 「私のいとこは当時妊娠していたが、生まれた子には異常があった。流産も激増した。避難先の地域や学校では差別され、まるで動物をみるようなまなざしを向けられた。

東京新聞 その2

(12)一部除染 帰島迫られ

 米国は長年、汚染の事実を隠し続け、実験直後から続けた住民の健康調査も治療目的でなく、研究のためだった。一時期より減ったが、健康被害は今も続く。

 「頭蓋骨がない、目が見えないといった赤ちゃんが生まれる。放射能は遺伝子を傷つける。子の代には異常が出ず、孫の代に出ることも。いつまで比嘉が続くのか全く分からない」とアバッカさんは心配する。

 島に帰るか、帰らないか。アバッカさんは、今回の来日で、福島県にも足を運んだ。公的機関だけでなく、個人や市民団体が線量計を持って計測している姿に感銘を受けたという。

(13)内部被曝 計測が大切 住民団結すれば政府動く!

 「私は帰島に反対だが、もし変えるとすれば、住民が線量計やホールボディカウンターを持つこと、中立的な科学者による検査が必要」と話し、日本にこうエールを送る。

 「米国に補償や汚染対策をさせることができたのは、私たち住民がまとまって交渉を続けたから。団結して行動すれば政府は動く。福島の問題で、日本の皆さんも一丸となって動いてほしい」

(14)教訓 福島に生かせ

・・・・・・ 核実験被害に詳しい 三重大地域戦略センター研究員 竹峰誠一郎さん ・・・・・・

 ロンゲラップ環礁の本島では、汚染度をはいで島の端にある飛行場跡地に移動させ、空間線量はある程度下げられた。しかし除染したのは住宅地だけで、生活環境は破壊されたままだ。再居住計画には4500万ドルが投じれたが、莫大な金額をかけても被害は回復していない。

 同環礁での今後の問題は、外部被ばくよりも地元産の食べ物による内部被ばく。
住民の間でも帰島には賛否両論あり、順調に進むとは思えない。

 米政府が主導する今回の帰島は、強制移住の側面もある。対米外相で補償を勝ち取る原動力となった『共同体の一致団結」が再居住計画でバラバラにされようとしている。

 マーシャル諸島では、核実験の爆心地となったビキニ環礁で、1968年に米大統領が『安全宣言』をし、帰島が奨励された。

 ところがその後、住民の尿からプルトニウムが検出されるなど、高い危険性が判明し、78年にふたたび閉鎖された。すでにビキニの住民に帰島の気力は残っていない。

 マーシャル諸島の核被害は歴史的に積み重ねられてきた。なぜなら、米国が長年にわたって「安全」と言い続け、被害と責任を認めなかったためだ。

 福島の原発事故も同じ構図。安易に政府が「安全宣言」を出すと、さらに問題が深刻化する。

 マーシャル諸島の教訓を生かせるかどうか問われている。

(15)~デスクメモ~

 力ある者のでまかかせ、ウソ、情報隠し。それに振り回され、一方的に被害を受ける、何の落ち度もない人々。地勢的にまったく異なるにも関わらず、マーシャル諸島と福島県にこんな残酷な共通点があることに言葉を失う。私たちはまだ、過去の教訓を生かし切れていない。それが心苦しい。

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(16)(17)とも、目を背けることなくしっかりご覧下さい。

(16)チェルノブイリが生んだ奇形動物と奇形児



(17)çernobil



(18)~(23)は、 日々坦々 チェルノブイリの衝撃データから見る20年後のニッポン「がん、奇形、奇病、知能低下」からの転載記事です。『週刊現代2011年7/16・23号』の記事です。

(18)スクープ! 衝撃データ入手 子供だけじゃない、子供の子供が壊れる残酷すぎる結末

 年間20ミリでなく、1ミリという低い線量の被曝で健康被害が続出するという厳しいデータ。福島より首都圏のほうが危険なくらいだ

(19)20年後のニッポン がん 奇形 奇病 知能低下

 〝敵〟の姿形は見えず、匂いもしない。だが確実にわれわれの周囲にそれは撒き散らされている。放射性物質は、人間の身体も、国家の根幹も変えてしまう。この過酷な現実を、どう生き抜くべきか。

(20)妊婦たちのハイリスク

 怖れていたことが、ついに始まった。東京電力・福島第一原発の事故によって大量放出された放射性物質が人体を蝕み始めたのだ。

 広島での被爆体験があり、以来、放射能が人体に及ぼす悪影響の研究を続けてきた医師・肥田舜太郎氏は、こう警告する。「先日、福島の5歳の子供に紫斑が出たという相談を受けました。被曝による症状は、まず下痢から始まり、次に口内炎などの症状が現れます。それから鼻血が出るようになり、身体に紫斑が出始める。この子供さんも被曝の初期症状であるのは間違いない。広島・長崎の被爆者と同じ順序で症状が進行しています」

 現在、福島市内は避難区域ではないにもかかわらず、校庭や通学路の周辺で、毎時100μSv(マイクロシーベルト)以上=年換算で876mSv(ミリシーベルト)以上などというホットスポットが観測されている。生活、とくに子供を育てるにはあまりに厳しい環境だ。

 一方、福島第一原発は、高濃度汚染水の浄化がうまく進まず、最近になって2号機、3号機であらためて水素爆発の可能性が指摘された。事故当初に比べ、新たな放射性物質の放出は落ち着いてはいるが、ダダ漏れ状態は相変わらずで、収束への道筋は見えない。

 ここに一本の衝撃的なレポートがある。著者はウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所のドミトロ・M・グロジンスキー氏、訳者は、京都大学原子炉実験所の今中哲二助教だ。チェルノブイリ原発事故の約10年後にまとめられたこのレポートには、衝撃的なデータがいくつも紹介されている。

 〈事故のまさに直後から、災害の規模についての情報は、不当に見くびられ、また誤解されてきた。今日でさえ、世間一般の見方は、人類におよぼされた破局的大災害の実相からはるかにかけ離れている〉

 〈ウクライナにおいては、合計して300万人を超える人々がチェルノブイリ事故によって、病気になったと考えられる。そのうち約100万人は子供である〉

 ウクライナではチェルノブイリの事故後、数年が経過した頃から、国民の健康状態が劇的に悪化し始めたという。たとえば事故の4年後の1990年の時点で、同国は出生率が死亡率を上回る状態を維持していた(人口増加率0.6%)。ところが'91年から死亡率が急上昇して、人口増加率がマイナスに転落。'95年には出生率が9.6%に対して死亡率が15.4%にも達し、人口増加率は実にマイナス5.8%にまで激減した。

 同時に、労働年齢人口の死亡率が急上昇したことも確認されている。特に男性の死亡率が高く、'90年に10万人当たり697.7人だった死者が、'95年には1055.1人と大幅に悪化。「腫瘍」による死者が226.5人から349.7人に、「循環器系」の疾患による死者は202.1人から322.2人に増えており、被曝の影響を強く示唆している。

 そして驚くべきは、被曝者たちのうち、「健康とみなされる人の割合」だ。

 事故翌年の'87年の段階で、その割合は、「リクビダートル」(事故の収束にあたった作業員たち)で82%、「30㎞ゾーンからの避難者」で59%、「被曝した親から産まれた子供」で86%を保っていた。

 ところが8年後の'94年になると、この割合がなんと、それぞれ19%、18%、26%に激減したというのだ。事故から10年も経たないうちに、被災者のうち5人に4人は、何らかの疾患や健康上の問題を抱える、〝病人〟になってしまったというのである。

 このレポートを翻訳した今中氏はこう語る。
「グロジンスキー氏の資料は、データの裏付けという点で不十分な部分があること、また、ウクライナでは事故の後、旧ソ連の崩壊によってインフラや経済基盤が崩れた側面がありますので、それらを考慮する必要はあります。ただ、WHO(世界保健機関)が'96年に出した報告書でも、汚染地域の子供たちの健康状態が、かなり悪化していることが報告されています」

 子供は大人に比べて細胞分裂が盛んなため、より放射線の影響を受けやすい。諸説あるが、元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子氏によれば、子供の放射線感受性は「大人の3倍から10倍」にもなるという。とくに、甲状腺が放射性ヨウ素によって被曝することで起きる、甲状腺がんの増加はよく知られている。

 前出のグロジンスキー氏のレポートでもこう報告がなされている。

 〈チェルノブイリ事故で被曝した子供では、1987年から1996年まで慢性疾患がたえず増加してきた〉

 〈この約10年間で、罹病率は2.1倍に、発病率は2.5倍に増加した。罹病率の増加が最も激しいのは、腫瘍、先天的欠陥、血液、造血器系の病気であった〉

 〈同じ期間において、ウクライナ全体の子供の罹病率は、20.8%減少していることを指摘しておく〉

 被災地域の子供たちの病気の構成は、呼吸器系の病気が61.6%、神経系の病気が6.2%、消化器系の病気が5.7%、血液・造血器系の病気が3.5%だったという。

 慄然とするのは、「発生率が5.7倍になった」という先天的欠陥=奇形児の激増ぶりだ。
「チェルノブイリの放射能汚染地域では、事故の5~10年後に、先天性障害児の数が急に増えました。たとえば手足に異常を持っていたり、小頭症のようなケースが報告されています。その患者数は、実は甲状腺がんや小児白血病より、断然多いのですよ」[チェルノブイリ救援・中部理事で元名古屋大学理学部助手の河田昌東(まさはる)氏]

 66年前の原爆による被害でも、母胎内で被爆した胎児1473人のうち62人が小頭症だったとされ、そのうち半分以上が、重い精神遅滞を伴っていたとされている。妊娠25週までに被爆した胎児は、学習能力やIQ(知能指数)の低下も見られたという(『受ける?受けない?エックス線 CT検査 医療被ばくのリスク』高木学校医療被ばく問題研究グループ・七つ森書館)。

 また、チェルノブイリ事故で被害を受けたスウェーデンの研究によれば、56万人の児童を対象に調査したところ、事故時に妊娠8から25週齢だった児童にIQ及び学力の低下が見られ、その程度は放射性物質の汚染度に比例するという(同)。

 前出・肥田氏もこう語る。
「被曝による知能低下などの問題は、米国では非常に詳しく研究されています。核実験を何十年にもわたって繰り返してきたので、データの蓄積がある。そうした研究結果の中には、核実験がもっとも盛んに行われていた時代に生まれた子供は、成人する前後に殺人などの犯罪に走る確率が高くなった、というデータもあります」

(21)遺伝する可能性

 被曝の恐ろしさは、被害が直接、被曝した子供だけに止まらないことだ。

 被曝による遺伝的影響についての議論は分かれている。「被曝は遺伝しない」という学説も多い。しかし、一方でショウジョウバエやマウスを使った実験では、放射線の影響は子孫に受け継がれていくことが確認されている。前出・河田氏もこう話す。

 「広島、長崎の原爆でも、被爆は遺伝しないといわれてきました。しかし、私は遺伝的な影響はあると思っています。被曝すると遺伝子に傷がつくわけですが、その傷が大きければ不妊になってしまいます。でも、その傷が小さければ、できた子供にその傷が受け継がれていってしまう。

 そもそも、広島や長崎で『遺伝することはない』とされたのは、被爆2世が差別されることのないよう、社会的影響が考慮されたからでした。それは決して〝科学的な根拠〟に基づくものではないことを、知っておく必要があります」

 さらに放射線被害は、何もがんや白血病、心筋梗塞、そして奇形などに限らないことも注意が必要だ。

 被曝は、全身の免疫機能を低下させる。言ってしまえば「すべての病気に罹(かか)りやすく」なってしまう。糖尿病や白内障、さらにあらゆる感染症を発症する可能性があり、あるいは全身の倦怠感に襲われ、何もする気力がなくなるという症状も現れる(「ぶらぶら病」)。

 ぶらぶら病は、外見的には怠惰な引きこもりにしか見えない。結果的に発症者は、会社をクビになる、家庭生活が崩壊するなど、社会から爪弾(つまはじき)にされることも多い。
つまりチェルノブイリの事故で、ウクライナの被災者のうち、「健康体がたった2割」というのは、決して大袈裟な数字ではないのだ。原発事故は、被災者個人や村・市などのコミュニティーだけでなく、国家までをも破壊していく。

(22)低線量被曝×内部被曝

 そしてさらなる問題は、被害の範囲が、どこまで拡大するのか? ということだ。福島県内の原発周辺地域は、セシウム134と同137による汚染が1㎡あたり300万bq(ベクレル)と、チェルノブイリの強制避難地域(1㎡あたり55万bq)よりはるかに高い。

 これらの地域が危険なことに、異論はないだろう。しかし、事故後100日を経過して、「福島は危ないが、その他の地域はそうでもない」という楽観論も広がっている。

 だが、それはとんでもない間違いだ。チェルノブイリを例に取れば、「東京」を含む首都圏も、紛れもない〝放射能汚染地帯〟であることを忘れてはならない。

 前出のレポートによれば、チェルノブイリの事故被災者は、ウクライナの公式資料では4つのグループに分けられているという。
①リクビダートル
②(原発から)30㎞ゾーン、強制移住ゾーン(年間被曝量の基準は5mSv)からの移住者など
③厳重な放射能管理が行われる地域(年間被曝量は1mSv以内)に居住しているか、事故後数年間にわたって住み続けていた住民
④以上のいずれかのグループに属する親から産まれた子供たち

 察しのいい読者諸氏なら、すぐに気付いたはず。「年間1mSv以内」の第3グループ、これは日本の場合、首都圏も含まれる。現在、毎時0.1μSv以上の地点が多数あることが分かっている東京・千葉・茨城などは、チェルノブイリで言えば「厳重な放射能管理地域」にあたるのだ。

 レポートには続いてこう記されている。〈病人の数は第3グループで56.3%、第2グループで33.6%、それぞれ増加している〉

 なんと、低線量被曝であるはずの第3グループのほうが、第2グループより病気の罹患率が増加していたというのだ。

 なぜこんな事が起きるのか。キーワードは「低線量被曝」と「内部被曝」だ。前出・肥田氏はこう語る。
「高線量を瞬間的に浴びる場合と、低線量で長期間、内部被曝する場合、実は後者のほうが影響が大きいのです。これを、発見者のアブラム・ペトカウ氏の名前を取って『ペトカウ効果』と言います。この学説は長く認められてきませんでしたが、最近になってようやく認識が広がってきました」

 慢性的・長期的な低線量の内部被曝が被害をより拡大する。レポートも、シラカバやオオムギといった植物に対する放射線の影響を考察した上で、次のように結論している。

 〈低線量率での慢性被曝の場合、隠された障害が、DNA修復機構のどこかに依然として残っている〉

 〈データは、組織内に取り込まれた放射性核種による低線量被曝が、強い遺伝的な影響を与えることを結論づけている〉

 つまり、低線量の内部被曝は、被曝した本人のみならず、その子孫にも悪影響を及ぼす可能性が高い。子供が〝壊れて〟しまった場合、被害はその子のみに止まらず、子供の子供の人生まで、放射線は破壊する。

 こんな重大な情報が、なぜまともに国民に伝えられていないのか。原因は、日本政府が被曝許容量の基準を決める際に用いる、ICRP(国際放射線防護委員会)の姿勢だと指摘するのは、琉球大学の矢ヶ崎克馬名誉教授だ。
「ICRPは、基本的に内部被曝の影響を認めていません。そして、自らの基準に合致しないがんなどの症状は、『放射線の影響ではない。ストレスが原因だ』などという結論で片付けてしまうのです」

(23)一刻も早く除染を

 日本政府が事あるごとに自己正当化のために引用するICRP基準では、1Sv(1000mSv)の被曝でも、がん患者は5%しか増えないことになっている。

 ところが、スウェーデンで実施されたチェルノブイリ後の疫学調査によれば、セシウム137の汚染による年間被曝線量が3.4mSv(≒毎時0.39μSv)程度の場所で、ガン発症率は11%も増えたという(神戸大学大学院海事科学研究科・山内知也教授)。

 日本政府が喧伝する〝安全〟が、いかに根拠が薄く、いい加減であるかがよく分かるデータと言える。

「内部被曝を考慮するECRR(欧州放射線リスク委員会)のモデルだと、チェルノブイリ事故で放射性物質を体内に取り込んでしまった人の内部被曝線量は、ICRP式外部被曝線量の600倍であると結論しています。そもそもICRPにしても、『限度値より下なら安全だ』とは言っていない。低線量でも被害はあるとしています。なのに日本政府はさらに悪用して、それ以下は安全だ、野菜や肉も食べて良いとしている。言語道断です」(前出・矢ヶ崎氏)

 ぶらぶら病など、各種の体調異変や疾患は、早ければ来年から表面化すると言われる。チェルノブイリや広島・長崎の例をとれば、甲状腺がんや白血病が3年後あたりから増え始め、5年、10年と経過するうち、重大疾患を抱える被曝患者がどんどん増えていく。

 さらに、NCI(米国国立がん研究所)に所属する馬淵清彦医師によれば、「甲状腺がんのリスクは、20年後でも上昇している。チェルノブイリの場合、事故の20年後になっても、一番若い人で20歳前後、上は40歳近い人が甲状腺がんを発症している」という。このまま、政府による「安全デマ」を真に受けて漫然と過ごせば、20年後のニッポンは、恐ろしい現実に直面することになるだろう。

 この残酷すぎる現実に、国民はどう対処すればいいのか。前出・神戸大大学院の山内教授は、「子供を守るため、一刻も早く除染に取り組むべきだ」として、こう語る。
「東京でも年間1mSvを超えている地域がありますから、まずは幼稚園などから始めて、小学校、中学校、周辺の通学路といった順番で除染を行う。そして、各地域で『この場所なら安全です』という場所を確保し、増やしていくこと。そういう努力が必要です」

 また、チェルノブイリの事故後には、汚染された食物・飲料を摂取しないよう工夫した人とそうでない人で、内部被曝の量に大きな差があった。注意すべきは、肉や魚などは、いったん検出される放射性物質が減っても、数年後に再び上昇するということ。汚染されたエサを取り込むことで、生物濃縮が起こるからだ。

 セシウム137の半減期は30年、プルトニウムの半減期は2万4000年。残念ながら日本は、こうした放射性物質と〝共存〟していくしかなくなってしまった。

 この過酷な状況の中、政府はどう国民の健康と命を守っていくのか。無節操で無責任な施策は、もはや1ミリも許されない。

(24)福田元昭の解説

池谷奉文会長の発言についての私の意見は、(5)の冒頭に出ている意見とまったく同じです。(2)の4行目に、千葉や茨城や群馬がなぜ入っていないのと突っ込みを入れてみたくなります。

 千葉県でも奇形植物が生まれているのに。千葉県柏市など常磐線やつくばエクスプレスの沿線は、Hotspotが多い。そのせいか千葉県は人口減少に悩んでいる。時々、その話題が首都圏ニュースに出てくる。つい最近も森田健作千葉県知事がそのことをニュースで語っていました。それにしても、昔ドラマで「吉川く~ん^・^♪」なんてやっていた男が今や県知事ですか。

柏市と言えば、柏市在住の大塚範一のことを、<39.「大地震のとき原発は暴走して、原子爆弾の爆発となって大惨事をもたらす。」と2010年8月刊行の「原子炉時限爆弾」と言う本で警告した広瀬隆は、「週刊朝日 2012年3月9日号」で、「福島第一原発に末期的事故の予感 人生最後の事態も」と警告しているが、また、彼の警告は現実化するのか?>をはじめ、何回か拙ブログで取り上げましたね。フジTVの番組でやたらに福島県産の食品を食べさせられた上に柏市在住では、急性リンパ性白血病になっても当然なのかもしれません。一刻も早い回復をお祈り申し上げます。「大塚範一が急性リンパ性白血病になったのは、労災<労働災害>ではないのか?」と言う記事をUPしようと思っているが、なかなか現実化しない。

次に茨城についてふれよう。茨城は福島に隣接しているんですよ。当然入れるべきでしょう。NHKがBSも含めヘビーローテーションでOAしている「梅ちゃん先生」のロケ地が茨城県内でも放射線量が高い高萩市であることを、「68.今日<4月2日>から放送開始のNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」は、なぜ福島原発に近く茨城県内でも放射線量が高い高萩市がロケ地なのか?」で綴りました。

 奇形動植物と言えば、2012年6月23日に衆議院議員・下村博文氏が自身のブログにて、板橋区ホタル生態環境館のホタルに放射能の影響で奇形が増加しているという飼育員の発言を紹介した。

奇形動植物の例は結構挙げることができるが、きりがないのでやめる。動植物がそのような有様なのだから、人間もと考えるのが素直な発想だろう。

池谷奉文会長の発言を否定する動きは、福島の奇形児の情報を発信した際に、岩上安身がバッシングされたのと似ているかもしれない。

ネット上でも、「片手がない奇形児などが産まれ始めている」と既に2011年11月の段階で書き込みがある。その2011年11月の段階で書き込みには、自衛隊が64名、警官が300人弱被曝で亡くなっている話も掲載されている。その話が事実なら、被曝で亡くなった方々は現在はもっと増えているのかもしれない。

 (5)に出てくる山下氏が、拙ブログの「61.嫌がる被ばく者を連行し、裸にして性器の形に異常がないかまで調べた奴は誰だ?」<60.「放射能の市民計測は禁止した方がいい」と主張したのは誰だ?>「 59.山下俊一は、現代の石井四郎か?」「58.山下俊一は殺人鬼か?」などで取り上げた山下俊一である。

(23)で神戸大学大学院海事科学研究科・山内知也教授の研究成果を紹介した。私は、今年8月1日~3日、神戸大学大学院経済学研究科の先生方からいろいろと学ぶ機会があった。いずれ、拙ブログで報告させて頂きたい。

 最後になりますが、健康と言えるベラルーシの子供はわずか2割、8割のベラルーシの子供達はチェルノブイリ事故以前のデータと比べると健康でないことを綴っておきます。

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