134.原発はローコストか?

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(1)大飯原発再稼働は新幹線敦賀延伸がお土産との声

4月7日午後、琵琶湖の北にある日本海(若狭原発群)から吹きつける冷たい風を受けながら「大飯原発再稼働を許さない4・7関西集会」が大津市のなぎさ公園で行われた。

 600人の参加者は福島の子供たちを招いてのキャンプ報告に涙し、避難してきた人の話に怒りを共有した集会となった。

 一方福井県美浜町の住民は「再稼働は新幹線敦賀延伸決定のお土産つきだ」との声をあげた。

 隣接する京都からは「再稼働を止める直接アクションも辞さない」という発言も出た。週明けにも枝野経産大臣が福井に出向くとされる中、関西に住む市民たちは集会後大津市内をデモ行進し、再稼働を許さない決意を訴えた。

集会の中で、この春休みに福島の子供を滋賀県高島町に招き1週間保養キャンプを実行した藤木直子さんの報告があった

「子供27人、親12人でキャンプした。福島の母親たちからは『こんなに遠い人たちが私たちの事を想ってくれたことに感謝しています』との言葉をいただいた。しかし、勇気づけられたのは私たちの方でした。」「怒ってもしようがない。笑いながらも泣いているお母さんたち。生きるために個人の決断として罪悪感にとらわれながら留まる苦しさ。除染で水しぶきを浴びながらしなければならない。子供を外で遊ばせられない。給食では産地は県外としか言わない学校。マスクはするなという教員。そんなやりかたでいいのか教えられたのは私たちでした」(概略)

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こうした集会をあざ笑うかのように、野田首相は昨日<6月8日>夕方、大飯原発再稼働を宣言した。

(2)2012年6月8日18:00からの野田首相の会見の全文

 本日は大飯発電所3、4号機の再起動の問題につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話をさせていただきたいと思います。

 4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。夏場の電力需要のピークが近づき、結論を出さなければならない時期が迫りつつあります。国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。それは国として果たさなければならない最大の責務であると信じています。

 その具体的に意味するところは2つあります。国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。

 これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります。勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています。

 その上で、原子力安全への国民の信頼回復のためには、新たな体制を一刻も早く発足させ、規制を刷新しなければなりません。速やかに関連法案の成案を得て、実施に移せるよう、国会での議論が進展することを強く期待をしています。

 こうした意味では、実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していくこととなります。その間、専門職員を要する福井県にも御協力を仰ぎ、国の一元的な責任の下で、特別な監視体制を構築いたします。これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。

 なお、大飯発電所3、4号機以外の再起動については、大飯同様に引き続き丁寧に個別に安全性を判断してまいります。

 国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。

 数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とかできるかもしれません。しかし、関西での15%もの受給ギャップは、昨年の東日本でも体験しなかった水準であり、現実的には極めて厳しいハードルだと思います。

 仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます。東日本の方々は震災直後の日々を鮮明に覚えておられると思います。計画停電がなされ得るという事態になれば、それが実際に行われるか否かにかかわらず、日常生活や経済活動は大きく混乱をしてしまいます。

 そうした事態を回避するために最善を尽くさなければなりません。夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。更に我が国は石油資源の7割を中東に頼っています。仮に中東からの輸入に支障が生じる事態が起これば、かつての石油ショックのような痛みも覚悟しなければなりません。国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも、原発は重要な電源であります。

 そして、私たちは大都市における豊かで人間らしい暮らしを電力供給地に頼って実現をしてまいりました。関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町であります。これら立地自治体はこれまで40年以上にわたり原子力発電と向き合い、電力消費時に電力の供給を続けてこられました。私たちは立地自治体への敬意と感謝の念を新たにしなければなりません。

 以上を申し上げた上で、私の考えを総括的に申し上げたいと思います。国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります。その上で、特に立地自治体の御理解を改めてお願いを申し上げたいと思います。御理解をいただいたところで再起動のプロセスを進めてまいりたいと思います。

 福島で避難を余儀なくされている皆さん、福島に生きる子どもたち。そして、不安を感じる母親の皆さん。東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることは、よくよく理解できます。しかし、私は国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできません。

 一方、直面している現実の再起動の問題とは別に、3月11日の原発事故を受け、政権として、中長期のエネルギー政策について、原発への依存度を可能な限り減らす方向で検討を行ってまいりました。この間、再生可能エネルギーの拡大や省エネの普及にも全力を挙げてまいりました。

 これは国の行く末を左右する大きな課題であります。社会の安全・安心の確保、エネルギー安全保障、産業や雇用への影響、地球温暖化問題への対応、経済成長の促進といった視点を持って、政府として選択肢を示し、国民の皆様との議論の中で、8月をめどに決めていきたいと考えております。国論を二分している状況で1つの結論を出す。これはまさに私の責任であります。

 再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います。国民の生活を守るための今回の判断に、何とぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げます。

 また、原子力に関する安全性を確保し、それを更に高めていく努力をどこまでも不断に追及していくことは、重ねてお約束を申し上げたいと思います。

 私からは以上でございます。

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 この後、質疑応答がありました。こちらを活字でご覧になりたい方は、(2)・・をクリックして、リンク先「首相官邸」をご覧下さい。動画もご覧になれます。

(3)今回のテーマ

首相の声明に対して書きたいことは山ほどありますが、取りあえず、一つだけ指摘します。

 首相が、「電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避ける」と言っていることから、現在でも「原発はローコスト」だと思い込んでいる人々がたくさんいらっしゃるのではないかと思い、今回はさしあたり、「原発はエコで安上がりは大嘘!」と主張したい。

(4)「エコ原発」虚構 火力より高コスト 太陽光発電比 CO2排出は2倍 立命館大学 大島教授の研究

「コストも安くCO2排出も少ない」と政府が宣伝している原子力発電の発電単価が、火力や水力よりも高く、温室効果ガスも太陽光発電の約2倍のCO2を排出するなど経済面でも環境面でも大きな問題をかかえていることがわかりました。

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 立命館大学の大島堅一教授が最新の研究成果をまとめたもの。地球温暖化対策として原子力発電を推進しようとする電力業界などの試算の虚構性を明らかにして「原子力発電推進には国民的な議論が必要だ」と強調しました。

 原発を推進する電気事業連合会や経済産業省などは、発電量1キロワット時あたりの発電コストを原子力5・3円、石炭5・7円、石油10・7円(いずれも2004年時)と評価。CO2排出量については、発電量1キロワット時あたり原子力22~25グラム、風力29グラム、太陽光53グラムと公表してきました。

 発電コストについて、大島教授は電力会社の有価証券報告書、政府の原子力発電への財政支出、原子力発電の立地から運転、使用済み核燃料の処理にかかった実際の費用(1970~2007年度)の分析結果を紹介。「(発電量1キロワット時あたり)原子力が10・68円、火力9・9円、水力7・26円になる。原子力発電の夜間の発電電力を利用する揚水発電のコストを含めると原子力は12円になり、一番コストが高い電源となっている。発電単価でみても原子力は安価ではない」と強調しました。

 CO2排出量について、大島教授は経産省などの発表した数字を批判。「原発の発電コストが80%稼働率など現実性のないモデルで試算されている。CO2排出量の試算も古いデータや信頼性のないデータ、非公開データや計算法が不明なものが多かった」と指摘しました。

 また、CO2排出量について信頼できるデータと方法による世界の研究例を示し、原子力発電が同66グラム、太陽光発電は同29~35グラムで、原子力が太陽光より2倍程度も多くなるという最新の結果を紹介。「排出量についてより透明性が高い包括的な研究が必要だ」と指摘しています。

 大島教授の研究成果は2010年5月23日、大阪市内でひらかれたシンポジウム「原子力発電は地球温暖化対策として有効か?」(主催・地球環境と大気汚染を考える全国市民会議=CASA)で紹介されました。

 シンポジウムでは、早川光俊CASA専務理事が「原子力発電に依存しないで、自然エネルギー利用などの国内対策で2020年にCO225%削減が可能」というGDP成長モデル試算結果を報告しました。

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(5)注目すべきは!

(4)の転載記事がいったいいつ出されたか?

2010年5月26日(水)、つまり何と311の前である。転載元は「しんぶん赤旗」である。

311後、所謂「ブルジョア・マスコミ」も立命館大学の大島教授の研究をようやく取り上げるようになった。

「しんぶん赤旗」は、大企業の広告を掲載していないので、遠慮なく大企業にも意見が言えるとか、商業マスコミが取り上げない事を記事にすると定評がある。

この記事もその一例である。

その「しんぶん赤旗」は、読者の減少により、経営危機である。

(6)大飯原発直下に活断層の可能性 専門家指摘、関電は否定

関西電力大飯原発の敷地内にある断層について、名古屋大の鈴木康弘教授(変動地形学)と東洋大の渡辺満久教授(同)が「活断層の可能性がある」とする分析結果をまとめ、再稼働前の現地調査の必要性を指摘している。関電は「活断層ではないと判断しており、再調査の必要はない」としている。

 関電によれば大飯原発の敷地には断層が15ある。最も長い1本(F―6断層)について、3、4号機の原子炉設置許可の申請時に掘削調査などをしている。

 鈴木さんらが当時の資料や航空写真を確認したところ、新しい時期に断層が動いた可能性を示す粘土が断層面にあることや、断層の上にある堆積(たいせき)物の年代が特定できていないことが分かった。鈴木さんは「関電の調査は不十分で、断層の活動を否定できる根拠がない」と話す。

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(7)原子力発電に関する野田総理の発言に係る新潟県知事のコメント 2012年06月08日

本日、野田総理が、大飯原子力発電所について「安全性を確認した」と表明しました。
  
 現在、福島原発事故はいまだ収束しておらず、事故の検証も進行中であり、換言すれば、意思決定過程や組織のあり方なども含めた事故原因の特定も行われていません。事故原因が特定されなければ、対策を講じることができないことは自明の理であり、専門家である原子力安全委員会も班目委員長が安全を確認していないことを明言しています。
  
 このような状況下で専門家でもない総理が安全性を確認できるはずもありません。
  
 実際、「福島を襲ったような地震や津波が起きても事故を起こさない。」と限定付きでの「安全宣言」であり、福島を襲ったものとは異なる直下型の地震等の場合は再び「想定外」という言い訳が通る説明になっています。
  
 「電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らないことが確認されている。」との発言についても、現実には、「電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる」ということが福島の教訓であることを無視した説明です。
  
 さらに、政府の安全性の基準は暫定的なものであるとまで説明し、責任回避が可能な内容となっています。
  
 この他にも指摘しなければならない事項が含まれていますが、新たな安全規制機関も未設置であり、万が一の事態が生じた場合の対策も固まっていない中で、「安全を確認した」と表明することは、新たな「安全神話」を創造することとなり、極めて無責任であります。
  
 米国NRCでは、爆発や火災によってプラントの重要な部分が失われるようなシビアアクシデントに備えて対応(B.5.b[※])を準備しています。
  
 国民生活を人質にして、安全を軽視した宣言となっていることは極めて遺憾であります。

※ 米政府の原子力規制委員会(NRC)が9.11テロの翌年に米国内の原発に対し策定命令を出した「原子力施設に対する攻撃の可能性に備えた特別対策」

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新潟県は母のふるさとです。県民は立派な知事を選びました。それに引き替え・・・・。

(8)国会事故調委員長“再稼働”に疑問呈す

福島第一原発事故の原因を調査する国会の原発事故調査委員会の黒川清委員長は8日、野田首相が記者会見で、「国民の生活を守るために、大飯原発(福井・おおい町)3・4号機の再稼働が必要だ」と国民に理解を求めたことについて、「ぜひ国会から委託された独立した調査、その報告をしっかり見て、何も待たないで(再稼働を)やるのかなと。国家の信頼のメルトダウンが起こっているんじゃないのというのが私の感じです」と話した。

(9)「大飯」再稼働会見 国民を守るつもりなら 2012年6月9日付け東京新聞社説

 国民の生活を守るため、野田佳彦首相は関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させるというのだろうか。国民は知っている。その手順が間違っていることを。このままでは安心などできないことを。

 これは原発再稼働への手続きではなく、儀式である。

 西川一誠福井県知事の強い要請を受け、従来の発言をなぞっただけ、西川知事にボールを投げ返しただけではないか。誰のための記者会見だったのか。いくら「国民の生活を守るために」と繰り返しても、国民は見抜いている。そして儀式には、もううんざりだ。

 国民は、首相の言葉をどのように受け止めたのだろうか。

 「スケジュールありき、ではない」と首相は言う。しかし、長期停止した原発のフル稼働には六週間ほどかかる。そのような再起動の手順を踏まえた上で、小中学校が夏休みに入り、電力需要が本格的に高まる前に原発を動かしたいという、“逆算ありき”の姿勢は変わっていない。

 経済への影響、エネルギー安保など、原発の必要性は、執拗(しつよう)に強調された。だが国民が何より求める安全性については、依然置き去りにしたままだ。

 「実質的に安全は確保されている。しかし、政府の安全判断の基準は暫定的なもの」という矛盾した言葉の中に、自信のなさが透けて見えるようではないか。

 会見で新たな安全対策が示されたわけでもない。緊急時の指揮所となる免震施設の建設や、放射能除去フィルターの設置など、時間と費用のかかる対策は先送りにされたままである。これでどうして炉心損傷を起こさないと言い切れるのか。どんな責任がとれるのか。首相の言葉が軽すぎる。

 未来のエネルギーをどうするか。脱原発依存の道筋をどのように描いていくか。次代を担う子どもたちのために、国民が今、首相の口から最も聞きたいことである。それについても、八月に決めると先送りしただけだ。

 「関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町だ」と首相は言った。言われるまでもなく電力の消費者には、立地地域の長い苦渋の歴史を踏まえ、感謝し、その重荷を下ろしてもらうためにも、節電に挑む用意がある。ともに新たなエネルギー社会をつくる覚悟を育てている。そんな国民を惑わせ、隔ててしまうのは、その場しのぎの首相の言葉、先送りの姿勢にほかならない。

(10)野田首相の再稼動宣言に4000人が抗議



動画 堀北真希
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